このパスタ鍋は1980年に喜多さんの斬新なアイデアでデザインされ売り出されました。
当時まだパスタを食べる人が少ない上にスーパーなど小規模な販売のため、売り場から1年程で姿を消したお鍋です。その後このお鍋はイタリアのステンレス鍋のメーカーに資料として送られていました。当時イタリアの家庭ではパスタは普通の鍋で流し台においたザルで湯切りをするというのが風景だったそうです。このパスタ鍋は中ざるを持ち上げるだけでパスタの湯切りができるということでイタリアだけでなく世界中に広まり、やがて日本に逆輸入されることになったそうです。日本のメーカーは日本発オリジナル製品を作ったにもかかわらず、まるでイタリアから誕生したかのようなイメージになり世界中で一代旋風を巻き起こし、定着してしまったそうです。日本のオリジナル製品を発売と同時に世界のメディアに紹介するとか、イタリアに売り込むくらいの気概があってもよかったのではないか。たかが鍋といっても極めて高い付加価値がある。なぜあの時工業所有権の取得をしなかったかーーー。
最近出版された喜多俊之さんの本”デザインの力”には喜多さんならではのヒット商品を生み出す楽しさ、難しさ、など書かれている説得力のある本です。
当時いいお鍋ができましたと喜多さんからいただきこの活気的なアイデアのお鍋は沢山のパスタを湯がく時には欠かせられない物で、今でも大切に使っています。